blog地場の不動産仲介業者の業況調査から読み解く!近畿圏の物件動向
不動産取引、特に売買は情報を仕入れ売り時や買い時を見極めることが大切です。今回は、不動産情報サービスを提供する会社「アットホーム」の調査から、不動産市場の動向を見てみましょう。
不動産仲介業者の業況調査とは
「アットホーム」が行ったアンケートをもとに、情報ネットワーク加盟店の景気動向を調査。その結果から、近畿圏の不動産売買について読み解いていきます。
開業から5年を超えて仲介業に関わる、「都道府県知事免許」を有する不動産業者から前年同期比(DI)の回答を得た調査です。
DIの数値が50では前年並みを示し、50を上回る場合は好況、下回る場合は前年より業況が芳しくないことを表します。
地場の不動産仲介業者とは
全国にFC展開する大手の不動産業者など、都道府県を跨いで営業する業者は、「国土交通大臣免許」となり、2つ以上の都道府県での営業が認められます。
一方、都道府県を跨がずに営業する知事免許は、地場の不動産業者にのみ発行されるもので、調査エリアの動向を反映させます。
2022年から2022年前半までの不動産売買、どんな傾向?
2022年から2023年前半の動向を見てみると、1〜3月期は堅調を維持しつつも、上昇傾向にあるとは言い難い状況。これは、物件高騰により平均的な収入層の購買意欲が鈍っていることが原因との声が多く、業況は小幅な動きを見せています。近畿圏に限らず、この傾向は全国的に現れていました。(アットホーム調べ)
消費者目線で不動産売買の傾向を読み解くと
全国の物件購入希望者1,289名を対象として2023年1〜3月期に行った住まい探しにおける光熱費・物価上昇の調査では、「物価の変動を感じる」と答えた不動産購入希望者・買主が57.1%をマークしました。
賃貸にも同様の調査を行いましたが、賃貸の入居希望者の結果よりもおよそ5%も多く、不動産購入の意欲が生活費の上昇により低下していると読み解けます。
消費者の将来に対する不安が、不動産売買ではより顕著に反映されているともいえるでしょう。
そのなかでさらに物価上昇の影響や変化に対しての質問を行ったところ、購入を見送った・購入者減少などが60.5%とトップになっています。(自由回答を5位まで複数回答あり。)
物価の高騰は不動産物件にも影響を与えており、年々上昇傾向に。こうした物件価格高騰に加え、物価上昇で生活費が圧迫されて不動産の購入を見送る人が増えています。
一方で、エリアごとに傾向は異なるものの、相続物件の売却増や都心部での億を超える高額マンションの問合わせが順調との声もあります。高額物件への需要増が感じられるなど、都心部とそれ以外のエリアでも傾向の違いが現れました。
こうした不動産購入層の意欲はエリアによっても状況が異なるものと分析できます。
2022年1期(1〜3月)から2023年2期(4〜6月)の業況推移
2023年1期(1〜3月)では地場の不動産仲介業者から230社の回答が得られ、2023年2期(4〜6月)では233社の回答をもとに業況を調べています。
<引用>
https://athome-inc.jp/wp-content/themes/news/pdf/keikyoukan-2023-firstquarter/keikyoukan-2023-firstquarter.pdf
https://athome-inc.jp/wp-content/themes/news/pdf/keikyoukan-2023-secondquarter/keikyoukan-2023-secondquarter.pdf
(アンケート・集計:アットホーム調べ)
また、不動産仲介業者の業況を「良かった」「やや良かった」「前年並み」「やや悪かった」「悪かった」の所感に分けた質問に対しては、次のような結果が出ました。(アットホーム調べ)
良かった | やや良かった | 前年並み | やや悪かった | 悪かった | |
---|---|---|---|---|---|
22年4期 (n=237) |
5% | 16% | 43% | 23% | 12% |
23年1期 (n=230) |
5% | 20% | 38% | 25% | 13% |
23年2期 (n=233) |
4% | 15% | 46% | 21% | 13% |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
(アンケート・集計:アットホーム調べ)
すべての期間に対し「前年並み」がもっとも多くを占めますが、全期間で「良かった」に対して「悪かった」を選ぶ不動産仲介業者が上回っています。
新型コロナウイルスのパンデミックが起きた20年2期の最低値から回復こそしましたが、21年から売買部門の業況はトレンドの出ない状況で横ばいに推移しています。
これは、次の調査項目DIによって反映されています。
大阪の業況DIの推移
(アンケート・集計:アットホーム調べ)
続いて、近畿圏のなかでも、大阪の業況DI動向を見てみましょう。近畿圏全体と同様、横ばいで推移しています。大阪でも2020年の1期(1〜3月)にはDI値が大きく落ち込み、以後2021年1期まで回復基調だったものの、40〜45の間を推移しています。(アットホーム調べ)
良かった | やや良かった | 前年並み | やや悪かった | 悪かった | |
---|---|---|---|---|---|
22年4期 (n=128) |
5% | 16% | 41% | 27% | 10% |
23年1期 (n=132) |
3% | 19% | 39% | 28% | 11% |
23年2期 (n=233) |
5% | 10% | 47% | 26% | 12% |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
(アンケート・集計:アットホーム調べ)
売買仲介の業況調査で行った調査項目では、業況のほかに「問合わせ数」「依頼数」「成約期間」「成約数」「成約価格」などを設け、それぞれの推移を比較しています。
業況 | 問合せ数 | 依頼数 | 成約期間 | 成約数 | 成約価格 | |
---|---|---|---|---|---|---|
22年4期 | 44.5 | 40.6 | 41.2 | 43.0 | 38.9 | 57.8 |
23年1期 | 43.9 | 40.3 | 44.7 | 45.1 | 39.6 | 52.3 |
23年2期 | 42.5 | 40.5 | 44.4 | 43.8 | 37.9 | 57.1 |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
(アンケート・集計:アットホーム調べ)
3期分の推移を見てみると、問合せ数はほぼ変わらないものの依頼数は増加傾向にあります。2023年1期の成約数が2022年4期より多いものの、業況ではやや下降気味なことから、必ずしも業況が成約数だけと連動しているわけではないことがわかります。
2023年1期はその前期と2期よりも成約価格のDIが5ポイントほど低く、問合せから成約に至った件数、またその価格が大きく関わっています。
というのも、不動産仲介業者の収入となる仲介手数料は、物件価格に連動するためです。
購入希望者や買主へのアンケートから見る不動産動向
アットホームが不動産売買における購入希望者・買主1,289人に対し「住まい探しにおける光熱費・物価上昇の影響・変化」のアンケートをとりました。
なお、物価の影響を調査目的とするため売買物件の価格上昇の影響は除外して回答してもらっています。
調査の結果、半数以上となる57.1%の人が「変化を感じる」と回答。「変化を感じない」の回答を上回りました。
同様に賃貸の入居希望者、オーナー等にも調査を行いましたが、「変化を感じる」の回答は売買仲介がもっとも多く、賃貸よりも売買の方が価格高騰の影響を感じている割合が高く出ました。
不動産仲介業者へのアンケートから見る不動産動向
アットホームは不動産業者から寄せられるコメントに含まれるキーワードにも着目。キーワードの出現率から、業況判断に影響を与えた要因を探求しています。
ワード | 業況DI | キーワードの出現率と前年差 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
21年 | 22年 | 23年 | 21年 | 22年(前年差) | 23年(前年差) | ||||
1 | 建売 | 56.9 | 44.7 | 62.5 | 1.6% | 1.9% | +0.3P | 2.2% | +0.3% |
2 | 処分 | - | - | 61.4 | - | - | - | 1.2% | - |
3 | 業者 | 42.3 | 52.1 | 56.8 | 2.3% | 3.5% | +1.2P | 3.6% | +0.1P |
4 | 用地 | 64.3 | 56.2 | 56.8 | 1.3% | 1.2% | -0.1P | 1.2% | ±0P |
5 | 売主 | 70.8 | - | 56.8 | 1.1% | - | - | 1.2% | - |
6 | 相続 | 46.7 | 49.3 | 56.6 | 2.9% | 3.8% | +1.0P | 3.7% | -0.1P |
7 | 取引 | 50.0 | - | 56.3 | 1.2% | - | - | 1.3% | - |
8 | 事業 | 47.5 | 56.2 | 55.0 | 1.8% | 1.2% | -0.6P | 1.6% | +0.4P |
9 | 郊外 | 51.6 | 47.9 | 55.0 | 1.5% | 1.2% | -0.3P | 1.1% | -0.1P |
10 | 相談 | 48.0 | 43.8 | 54.8 | 2.4% | 2.0% | -0.4P | 2.3% | +0.3P |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
(アンケート・集計:アットホーム調べ)
ここ3年間でのキーワード出現率を比較すると、業況DIのトップ10に含まれる「建売」「業者」「事業」などのワードはDI=55以上の業況で上位に食い込んでいます。それぞれの出現率も21年からおおむね上昇。「建売業者などからの法人需要」「不動産事業者取引が増えている」「事業を始める方から事業用の購入問合せが多かった」などのコメントが多く寄せられています。
キーワードの出現率やコメントの内容から、事業に関する不動産事業者間の取引が売買仲介の業況を支えていることがうかがえます。
また、「相続」「処分」というキーワードも上位に入り、2021年と比べた出現頻度も上昇しています。この2つのキーワードは「相続した家屋・土地の処分」といったようにセットで使われるケースが多くありました。売却案件の中でも、相続関連の増加が業況DIを高めたと考えられます。
不動産売却サポート関西株式会社では、大阪を中心に士業と連携した不動産取引でお客様のお悩みをサポートいたします。
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